Japanese
English
Bedside Teaching
肺空気塞栓の診断
Detection of lung air embolism
田上 恵
1
Megumi Tagami
1
1東京大学医学部麻酔学教室
1Department of Anesthesiology, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.387-390
発行日 1983年4月15日
Published Date 1983/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204208
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Ⅰ.空気塞栓はなぜ起きるか
人工心肺1,2)や輸液セット3,4)などから人為的ミスにより空気塞栓が起きることもあるが,多くの場合は手術中,特に坐位手術中に起きるものである。"なぜ起き易いか"には二つの理由がある。第一は,坐位手術時においては術野の静脈内圧が陰圧になるからである(図1)。Pv=CVP−Xcm blood+(P)
術野の静脈圧Pv,中心静脈圧CVP,術野と右心房との距離差Xcm,人為的因子による圧P
上記の式のように,CVPの圧を10cm H2Oとすると,術野と右心房との距離が10cm以上になった場合,人為的になんらかの圧Pをかけてやらないかぎり,術野の静脈圧Pvが陰圧となる。このように,ひとたび術野の静脈が破綻すると,外界から空気が静脈内へ容易に流入するといえる。しかし,一般的には生体の防禦反応が働き,空気が大量に流入することは少ない。これは末梢の静脈圧が陰圧になると生理学的に静脈壁がつぶれて閉じてしまうからである。第二の理由は,坐位で行なう手術は後頭下部の手術が多く,この部位の血管は網目状に発達し,しかも周りの組織が固いために静脈壁が閉じにくく,また,bone sinusが発達していることから,空気の流入が容易に起きることにある。このために開頭時および閉頭時に空気塞栓がおこりやすい。
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