別冊秋号 —麻酔科医なら知っておきたい—血栓症・塞栓症
PART4 静脈性血栓
22 肺塞栓症(エコノミークラス症候群)
榛沢 和彦
1
1新潟大学医歯学総合研究科 先進血管病・塞栓症治療・予防講座
pp.157-163
発行日 2021年9月17日
Published Date 2021/9/17
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200238
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市中発症肺塞栓症
市中発症(院外発症)における肺塞栓症(PE)の原因については呂ら1)が法医解剖症例で報告している。それによれば,下腿のヒラメ筋静脈に血栓が初発し,そして中枢側に大きくなり(中枢進展)飛散して肺動脈を塞栓したものが90%以上であった。また器質化した古い血栓がヒラメ筋静脈に残存していて,そこに新たな新鮮血栓が発生したものが90%以上であった(慢性反復性血栓)1)。このことから市中発症のPEの原因のほとんどは慢性を含めた下腿のヒラメ筋静脈血栓にあると考えられる。図1に市中発症のPEが起きる様子を示す。ヒラメ筋静脈血栓は大きくても後脛骨静脈や腓骨静脈を閉塞させないことから無症状のことが多い。そして血流に沿って膝窩静脈から大腿静脈へと大きくなってもこれらの静脈を閉塞しないことから症状は呈さない。そして腸骨静脈まで進展してから膝関節や股関節の動きで血栓が遊離し右心を通って肺動脈に達する。血栓が肺動脈を塞栓してPEを発症するまでは症状がないことが多い。両肺動脈幹を塞栓した場合は突然死となる。
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