別冊秋号 —麻酔科医なら知っておきたい—血栓症・塞栓症
PART4 静脈性血栓
21 下肢静脈血栓
秋吉 浩三郎
1
1福岡大学医学部 麻酔科学教室
pp.151-156
発行日 2021年9月17日
Published Date 2021/9/17
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200237
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周術期医療の安全性は年々高まっている。周術期死亡率(術後7日以内,麻酔管理が原因)は,1994年に1万人当たり0.36%だったものが,2011年には0.04%と約10分の1まで低下した1)。一方,世界では手術後の合併症が,虚血性心疾患(17.3%),脳梗塞(10.1%)に続いて3番目の死亡原因であり,このために年間約400万人が死亡していると推測されている2)。これは,周術期全体の安全性を改善するためには術後合併症の軽減をも目指さなくてはならないことを示しており,麻酔科医が注力すべき領域である。患者予後に大きな影響を与える術後合併症の中でも,肺血栓塞栓症pulmonary thromboembolism(PTE)は致死率が高く,注意すべき術後合併症の最たるものである。院内発症の急性PTEの死亡率は14%,特に心原性ショックを呈した症例では死亡率30%と非常に高いが,心原性ショックを呈さなかった症例でも死亡率6%と高く3),予防と早期発見が非常に重要である。
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