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きのう・きょう・あした
和田 武雄
1
1札幌医大
pp.1669
発行日 1965年11月10日
Published Date 1965/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201063
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厚生白書が発表された。今年も平均寿命の延長が伝えられるが,長生きでは,たしかに日本も先進国の第一線に並んだことになる。だが2,3日前「こんなことになりました」といつて辞令片手に挨拶まわりに来た人のことを思い出す。「○○附を命ずる」○○附とは何をするところ,と気のきかない問いをした時のことが,忘れられない。ユニホームをぬいだこの人は,きのうも,きようも車の波を眺めている。いつ読んだ小説だつたかに,"Das Leben strömt"とあつた文字が追つかけ,脳裡をかすめる。
そういえば来春の大学卒業生が大変就職難で困るということも聞かれる。医学の進歩が社会にもたらすあすの問題には,原爆ほどのことはないにしても,人間個々の医学としてのみこれを研究しても,人間の集団に対する医学的配慮の欠けは大きいおとし穴をつくりそうに思えてならない。公衆衛生という学問にはまず"公衆"という教育が先だといったS君の言葉が,いま分るような気がする。世界観のしつかりした医学教育・医学研究を考えねばなるまい。
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