別冊春号 2019のシェヘラザードたち
第5夜 しくじり先生の麻酔記録より
小澤 章子
1
1独立行政法人国立病院機構 静岡医療センター 麻酔科・集中治療部
pp.25-31
発行日 2019年4月19日
Published Date 2019/4/19
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200055
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“将来は認知症を治したい,予防したい”と思っていた医学部6年生が,「麻酔科医には内科医の思考過程と外科医の判断力が求められる」と麻酔科に誘われ,「では2年間だけお世話になります」と言って入局してから,あっという間に30年以上が経過した。昭和から平成初期は,モニタ,薬剤,器具,人手のいずれもそろっておらず,五感(ときに第六感)と集中力を駆使して麻酔をしていた。ヒヤリとする場面も多く,麻酔科学は危機管理学であると痛感し,どのようにしたら安全に管理できるかを毎日考えていた。幸か不幸か医師3年目から現在までの年月の約8割で麻酔科の長を務め,小さい船ながらも常に船長としての判断と責任を求められてきた。麻酔科医を増やしたい,全国で麻酔科医がかかわる医療事故をゼロにしたいと願い,現在に至る。近年,医療安全ではSafety-Ⅰ,Safety-Ⅱを意識することが提唱されている。詳細は成書1)ほかに譲るが,大まかには,Safety-Ⅰは失敗に学ぶ,失敗を減らす,インシデントを分析しヒューマンエラーを制御することが,Safety-Ⅱは成功に学ぶ,ヒューマンエラーが起きることを前提とし,どうやって被害を最小化するかを考える,刻々と変わる状況のなかで臨機応変力,レジリエンスを高めることが大切と言われている。
あまり器用でない船長が,自分と船員とチームのレジリエンスをどのように高めたらよいか,試行錯誤してきた事例を紹介する(事例は2000年以前のものです)。
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