南極物語
極夜
大野 義一朗
1
Giichiro OHNO
1
1東葛病院外科
pp.811
発行日 2001年6月20日
Published Date 2001/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904491
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南半球では太陽は北の空を通る.ただそれだけのことですっかり時間と方向感覚が失われた.その太陽の北中高度がどんどん低くなり,5月には凍った水平線を転がるようになり,月末4日間のブリザードが明けてみるとすでに太陽の出ない極夜に突入していた.
極夜といっても昭和基地の緯度では昼の数時間北の空が明るみ,全くの暗闇にはならない.それでも1日中螢光灯の下での生活を強いられた.目が覚めた時,時計の「10:00」が寝入りなのか寝過ごしたのか区別がつかない.日課は24時間で組まれていたが「昼間」はぼーっとして仕事にならず,逆に「夜間」は目がさえて基地のあちこちで騒ぎが始まった.昼夜の喪失に伴う概日リズムの乱れがじわじわと生活と心理面に影響を与えていた.越冬中のリズムの乱れについては米山重人先生(32,37次)の精力的な仕事(Am J Physiol277,1999)があるが,我々が越冬していた年(1997〜1999)の稚内市立病院外科は彼と部長の高木知敬先生(21,28次)の2名4回の越冬経験があり「わからない時は稚内」が合い言葉になっていた.
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