別冊春号 2018のシェヘラザードたち
第十二夜 生体は微量なホルモンにより制御されている—ホルモンの魅力にとりつかれて
恒吉 勇男
1
1宮崎大学医学部 麻酔生体管理学
pp.73-76
発行日 2018年4月18日
Published Date 2018/4/18
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200012
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
麻酔科専門医の取得後,集中治療部に配属となった。当時の集中治療部は鬼の某先生が部長として勤務されており,半端なく鍛えられた。朝7時15分からの回診に始まり部長が帰る夜9時すぎまでの長時間勤務,当直は月7回,その翌日も通常勤務と,今でいうブラックな職場であったかもしれない。しかしながら,それがあたり前の雰囲気があり,長時間働いた見返りとして得られる知識と経験は多かった。敗血症性ショック患者をみる機会が多く,たいていの患者は腎不全に陥ることから,当時黎明期にあった持続濾過透析に熱心に取り組むことができた。また思い出深い症例としては,遠方の病院で薬物中毒の患者が肺水腫のため重篤な低酸素血症を罹患したが移動できないため経皮的心肺補助(PCPS)回路をフェリーで運んでアウェイで呼吸管理をした症例,拡張型心筋症の心不全患者に左心補助人工心臓(LVAD)を装着し循環管理をしたが終焉がみえなくなり精神的に苦慮した症例,心停止寸前まで無呼吸となりながら何度も気管挿管を繰り返した挿管困難な小児症例など,生命の限界に向き合う集中治療の厳しさを身をもって経験した。そのような日々のなかで,その後の研究の柱となる生体内ホルモンのドラマティックな役割に驚かされた症例に出会った。
Copyright © 2018, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.