別冊春号 2018のシェヘラザードたち
第六夜 麻酔科医はがん患者の苦痛緩和に貢献できるか?
肥塚 史郎
1
1群馬県立がんセンター 疼痛治療部/緩和ケア科/いたみ緩和センター
pp.37-42
発行日 2018年4月18日
Published Date 2018/4/18
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200006
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子どもの頃から臆病で,痛いこと・苦しいことから逃げてばかりいた。医者・歯医者の診察におびえて逃げまわり,ましてや注射(昔は子どもの風邪ごときで開業医はよく注射を行っていた!!)など3〜4人の看護師に押さえつけられてされたもので,母を相当に困らせたと思う。そんな人間が医師になったのだから,子ども時代を知っている人はさぞ驚いたことだろう。しかし,むしろ痛いこと苦しいことをなんとかしたいという気持ちが医師になった動機の1つであることは間違いないと思う。医学部も高学年になった頃に麻酔科という診療科があることを初めて知った。ポリクリのときに当時の麻酔科教授がペインクリニックというものを外来で見せてくださった。震える手でブロック注射を打ち,瞬く間に患者の痛みを和らげたことに妙に感動した覚えがある。痛みを専門的に扱う診療科があったのだ。ほどなく私は痛みを治療する麻酔科医になろうと思った。あとで知ったことだが,この教授はがんの痛みを脳下垂体電気凝固破壊術やモルヒネで緩和することを提唱した権威だった。
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