特集 脳梗塞
8.脳梗塞とてんかん—あらゆるフェーズでの対応,中長期的な視点が求められる
音成 秀一郎
1,2
Shuichiro NESHIGE
1,2
1広島大学大学院医系科学研究科 脳神経内科学
2広島大学病院 てんかんセンター
pp.307-315
発行日 2022年12月1日
Published Date 2022/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103901025
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近年,脳梗塞治療の発展により脳卒中生存者(stroke survivor)が増えた一方で,その増加するstroke survivorの後遺症対応や合併症管理が課題となっている。脳卒中の合併症の1つにけいれん発作があり,脳卒中後てんかんがある。急性期では脳卒中患者の約10%でけいれんがみられ1),入院中の死亡や機能転帰不良にも独立して関連する。また慢性期においては脳卒中後てんかんがstroke survivorの約5〜10%でみられ,患者QOLに大きな影響を与える2,3)。つまりけいれんやてんかんは,脳卒中のあらゆるフェーズで対応が求められる,頻度の高い合併症なのである。
てんかんの視点から俯瞰すると,てんかんは小児から高齢者まで全世代で発症する100人に1人のcommon diseaseである。成人での発症率・罹患率は年齢とともに上昇し,65歳以上で最多となる4,5)。脳卒中はこの高齢者のてんかんの原因の30〜40%を占め,最多である。加速する高齢化に加えて,stroke survivorの近年の増加トレンドをみるかぎり6),脳卒中後てんかんを日本のてんかん専門医だけでカバーすることは困難であり,現在進行形の超高齢社会の日本において,ホスピタリストに期待される脳卒中後けいれん/てんかんマネジメントへの役割は極めて大きい。
なお,脳卒中のうち脳梗塞と脳出血ではそれぞれ合併する発作のリスクが若干異なる。本稿では脳梗塞に関連したてんかん発作の急性期対応,鑑別診断,さらには慢性期に向けたマネジメントを提示症例をもとに概説する。
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