特集 心不全
Part 3:ICU,病棟での心不全管理
【コラム⑩】急性心不全の利尿薬投与でクレアチニンが上昇したらうっ血でも利尿薬をやめるべき?—worsening renal function(WRF)は果たして「真の悪者」なのか
赤井 靖宏
1
Yasuhiro AKAI
1
1奈良県立医科大学 地域医療学講座
pp.1034-1037
発行日 2018年12月1日
Published Date 2018/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900631
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心不全では心機能障害の重症度と進展速度によって,心拍出量の低下を代償するメカニズムが働く。心拍出量低下は,有効循環血液量を低下させて交感神経を活性化させる。この結果,末梢血管は収縮し,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系が活性化されて,腎尿細管におけるナトリウム再吸収が促進されるとともに,バソプレシンによる水再吸収亢進が惹起される。この代償メカニズムは,血行動態の維持には有利に働くが,一方,貯留傾向となった体液は各臓器のうっ血をきたし,急性心不全に伴う臓器障害の主因となる。急性心不全患者においては,急性期の肺うっ血を早期にコントロールすることが重要であり,早期介入が予後を改善することも示されている1)。
急性心不全の肺・全身うっ血治療には,しばしば利尿薬が使用される。特にループ利尿薬は,急性心不全治療の中心的利尿薬として頻用されてきたが,実臨床で少なからず経験するように,急性心不全患者にループ利尿薬を投与すると血清クレアチニン(Cr)が上昇する。これは,worsening renal function(WRF)と称され,急性心不全臨床研究のエンドポイントの1つとしても採用されていることが多い。
本稿では,急性心不全治療におけるWRFの臨床的意義について再考するとともに,WRFをきたした患者の利尿薬は中止すべきかについて考えてみたい。
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