特集 消化管疾患
10.小腸,大腸疾患:炎症性腸疾患—疾患の背景を理解し治療ストラテジーを考える
金城 徹
1
,
岸本 一人
2
,
外間 昭
1
,
金城 福則
3
Tetsu KINJO
1
,
Kazuto KISHIMOTO
2
,
Akira HOKAMA
1
,
Fukunori KINJO
3
1琉球大学医学部附属病院 光学医療診療部
2琉球大学医学部 第一内科
3浦添総合病院 消化器病センター
pp.809-827
発行日 2014年9月1日
Published Date 2014/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900342
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炎症性腸疾患inflammatory bowel disease(IBD)は,狭義には潰瘍性大腸炎ulcerative colitis(UC)とCrohn病Crohn's disease(CD)に分類される。日本において,IBDは年々増加傾向にあるが,両疾患ともに原因が完全に解明されておらず,厚生労働省の難病特定疾患に含まれている。UCは30歳代と50歳代に多く二峰性であり,CDは20歳代後半から30歳代に最も多く,ともに社会的に大きな影響を及ぼす年齢に罹患するため,患者が通常の生活ができるように適切な治療が必要となる。
IBDを診断するには問診が最も重要である。それに加えて,身体所見やX線,CT,内視鏡,病理所見,血液検査,便培養検査などの結果を合わせ,総合的に判断する。鑑別すべき疾患として最も重要なものに,感染性腸炎(細菌,結核,赤痢アメーバ)があり,誤診をすると免疫を抑える治療が加わることで原疾患が増悪しかねないため,慎重を要する。
日本におけるIBDの治療には,生物学的製剤をはじめ多くの治療選択肢が存在し,難病特定疾患に含まれていることから,十分な治療を受けることができる。それだけに,多様化した治療のなかからタイミングを逃さずに適切な治療を選択することが重要であり,厚生労働省の『難治性炎症性腸管障害に関する調査研究』班より治療指針が示されている。本稿ではIBDを診療するうえで知っておくべきポイントを症例に沿ってまとめ,研究班の治療指針をもとに論じる。
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