特集 周術期マネジメント
【ミニコラム】「重症」COPDでも安全に手術を行えるか?—1秒量は患者全体の状態を反映する指標ではない
羽白 高
1
Takashi HAJIRO
1
1天理よろづ相談所病院 呼吸器内科・呼吸管理センター
pp.296-300
発行日 2016年6月1日
Published Date 2016/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900161
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例えば,1秒量が50%予測値を下回るほど重度の閉塞性換気障害を示す慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に,負荷の高い全身麻酔手術は安全に施行できるのだろうか?
この問いに的確に答えるには,具体的な目の前の患者のCOPDの予後をどのように予測するか,そしてCOPDの「重症度」をどのように判断するかが明確でなければならないだろう。例えば手術対象疾患が,予後の情報が整理されている悪性疾患や,手術が施行されなければ近いうちに確実に重篤となることが予想される心・大血管系疾患の場合に,COPDの不確かな予後予測をもって手術をしないとするのは,エビデンスが不十分であり,また,心情として大変難しい。また,呼吸器疾患を専門としない医師(麻酔科医を含む)にとって,COPDの「重症度」は1秒量によって判断される閉塞性換気障害の程度や,6分間歩行などの運動能力で評価し,簡単に層別化し,術後の合併症のリスクを提示できるはず,と考えることだろう。しかし,重症度の評価はそれほど単純ではない。
本稿では,COPDの予後予測のための臨床指標と重症度評価について解説する。間接的ではあるが,上記命題への回答の一助となれば幸いである。
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