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術前検査の利点として,周術期リスクの察知ができる,実際の麻酔方法の選択に貢献できる,術後管理のガイドになる可能性がある,が挙げられる。欠点としては,周術期のマネジメントを変えない可能性がある,手術を延期させる可能性が増す,医療コストの上昇につながる,が挙げられる。術前検査で,全身機能の状態を把握し,手術や麻酔侵襲による生体へのリスクがどの程度であるか評価できれば,周術期の安全性を向上させる可能性が期待できるが,現在のところ,どの検査をどのタイミングで行うかについてのエビデンスは乏しく,医学的な必要性というより,各施設ごとのプロトコルに基づいているというのが現状である1)。
加えて,日本ではこの分野におけるエビデンスはほとんどなく,また,欧米で報告されたエビデンスが必ずしも日本には導入されず,疑いもなく経験的,慣習的に「ルーチン検査」が行われている問題がある。さらに,日本のガイドライン(日本循環器学会,日本麻酔科学会など)では術前検査についてはまったく取り上げていない。今後海外のガイドラインを参考にして,現時点でベストと思われるものを日本のガイドラインとして作成し,「ルーチン検査」に関する教育,啓蒙が必要であると考える。
最近の海外の白内障手術における研究で,術前の状態や手術内容により必要な検査の程度は異なるが,その施行にあたっては,患者の合併症や既往ではなく,医師の好みが影響を与えるという報告がなされた2)。ガイドラインやエビデンスよりも病院や医師の好みが,術前検査に影響を与えるという傾向は,日本でも十分に当てはまると考えられるが,本稿ではそれぞれの術前検査の必要性について,海外の現状(ガイドライン)とエビデンスから検討する。
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