特集 ICUルーチン
第1章 ICUにおけるケア
【コラム】頭高位は人工呼吸器管理患者のルーチン体位か?―エビデンスの検討と他体位との比較
志馬 伸朗
1
Nobuaki SHIME
1
1国立病院機構京都医療センター 救命救急センター・救命救急科・感染制御部
pp.204-207
発行日 2014年4月1日
Published Date 2014/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100645
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頭高位は,消化管液の逆流を防止し,人工呼吸器関連肺炎ventilator-associated pneumonia(VAP)予防に有効な介入とされてきた。米国医療の質改善研究所Institute for Healthcare Improvement(IHI)の人工呼吸バンドル1)や,北米の複数の肺炎診療ガイドライン2~4)には,一貫して頭高位を推奨する記載がある。このため,読者のなかには,人工呼吸器管理患者はルーチンに頭高位をとるべきと理解されている方も多いものと思う。しかし,頭高位によるVAP予防効果は1つの小規模無作為化比較試験(RCT)5)により証明されている一方で,否定的な論文6)もある。メタ解析でも,有効と結論した7)ものもあるが,解析の方法論には問題があり,この結論は不適切との意見8)もある。
これらの事実をふまえ,本コラムでは,“頭高位は人工呼吸器管理患者のルーチンの体位か”という命題を再考する。特に,①頭高位の真の有用性,②他の体位の可能性,に関して,近年の臨床試験結果を含め考察する。
Summary
●頭高位には消化管液の逆流を防止する効果がある。
●頭高位が人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防に真に有効かは不明である。
●頭高位により血圧低下,腹腔内圧上昇,褥瘡形成などの合併症が生じ得る。
●腹臥位や側臥位もVAP予防に有益であるかもしれない。
●頭高位を人工呼吸器管理患者のルーチン体位とする必要はない。
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