連載 今日から使える「ベッドサイド5分間ティーチング」・⑨
言語化しにくいことを言語化する:退院調整─急性期治療と同等に大切な臨床業務
北野 夕佳
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1聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院 救命救急センター
pp.174-178
発行日 2016年3月1日
Published Date 2016/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900144
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本稿は第9回である。これまでは具体的な疾患を示し,「医学的中身(診断・治療)」を中心に「5分間ティーチング」を紹介してきた。今回は,少し趣向を変えて「退院調整」を紹介したい。
当救命救急センターでは「昼カンファ」と名付けて,不定期にベッドサイド5分間ティーチング拡大版を行っており(目安30分以内),知らないと臨床業務が安全にまわらない不可欠な一般論を,カンファレンス(interactive teaching)形式で伝え,サマリーとして蓄積している。そのなかで,「退院調整」を行った回があった。臨床上必須で,できないと困ることだが,若手からは興味をもたれないだろうなあと思いつつ昼カンファをしたところ,これが予想外に好評であった。後期研修医からは「ずっと苦手意識があったが,何をやればいいか初めてわかった」「今まで退院調整が抜けていることを看護師や北野からがみがみ(?)言われていた意味がやっとわかり,目から鱗だった」,サマリーをシェアしている他院の指導医からは「言語化できずに結局自分が退院調整をする状態が続いていたが,こうすれば言語化して若手に教育できるのかと衝撃的だった」など予想外にうれしいレスポンスをもらった。
「医学的中身」以外にも「社会的調整」のように言語化しにくい分野もぜひ言語化を,という意味で今回紹介したい。なお,米国では在院日数を短縮させるため,日々病状に応じた退院調整をすることが必須の業務とみなされている。そのため,3年間の研修終了時には自然とこの能力が備わることになる。
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