特集 腫瘍
【コラム】腫瘍マーカーの正しい使い方—測定の意義を明確に説明できなければならない
後藤 悌
1
Yasushi GOTO
1
1国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科
pp.464-468
発行日 2016年9月1日
Published Date 2016/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900092
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腫瘍マーカーとは,腫瘍(がん)が存在する状況において,血液,尿,便などに増える物質と定義される。がん自体から分泌されていることが多いが,周囲の組織などから分泌されることもある。多くの腫瘍マーカーは実際に正常組織からも分泌されている。重要なのは,腫瘍があるときに,ないときと比べて明らかに増えていることである。そのような物質があれば,がん検診による早期発見,早期がん手術後の経過観察による再発の早期発見,進行がんの治療効果判定が可能となる。腫瘍マーカーの問題は,第一にそのような理想的な物質があるのか,第二にその特定によって臨床的に有意な結果を生むことができるのか,という点である。
世界的に腫瘍マーカーがどのように使われているかを調べてみると,驚くほど利用されていない。例えばHarvard大学の関連病院を発祥とするUpToDate®で,腫瘍マーカーについて記載されているのは,卵巣がん,大腸がん,精巣胚細胞腫瘍,原発不明がん,胆道がんのみである。日本ではしばしば検診,再発診断のために行われているが,それが有用とされる項目はほとんどない。
本稿では,この日本の実臨床との乖離の現状について考察することを1つの目標として,腫瘍マーカーの特徴について述べる。最近はDNAの変化や遺伝子発現のパターンなども腫瘍マーカーに分類されているが,日本で保険診療としてできる検査に限定し,ここでは扱わない。
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