特集 Respiratory ECMO 2.0
Respiratory ECMOの生理学:人体とECMOの相互作用を理解する
⓫ VV ECMOにおける右室傷害—心肺連関に基づいた右心保護戦略
萩原 祥弘
1,2
Yoshihiro HAGIWARA
1,2
1済生会宇都宮病院 救急・集中治療科
2栃木県救命救急センター
キーワード:
右室-肺動脈カップリング
,
右室傷害
,
lung rest
,
PEEP
,
腹臥位療法
,
NO吸入
Keyword:
右室-肺動脈カップリング
,
右室傷害
,
lung rest
,
PEEP
,
腹臥位療法
,
NO吸入
pp.423-435
発行日 2024年7月1日
Published Date 2024/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102201196
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はじめに
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者の20〜50%に肺高血圧に伴う右室傷害right ventricular injury(RVI)(メモ1)が合併し,それにより死亡率が約50%も上昇する1)。ARDS患者におけるRVIの発症要因には,血管内皮障害に伴うリモデリングや微小肺動脈塞栓,また間質性肺水腫・低酸素性肺血管攣縮hypoxic vasoconstriction(HPV)・呼吸性アシドーシス(高二酸化炭素血症)・人工呼吸器の高圧設定など複合的な要因が関与した肺血管抵抗(PVR)上昇が挙げられ,右室後負荷の増大による急性肺性心が主病態2)とされている。
ARDSに対するECMO(体外式膜型人工肺)患者のRVIに関するガイドラインは長年存在しなかったが,2024年8月にデルファイ法を用いた52人の専門家によるExpert Position Statementsが報告され,RVIの定義・診断・管理法に関する国際的なコンセンサスが示された3)。本稿ではその内容に触れながら,その他多くの知見・筆者の経験もふまえ,VV ECMOにおけるRVIに関する生理学から臨床上の実践に至るまでを解説する。
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