特集 Respiratory ECMO 2.0
Respiratory ECMOの生理学:人体とECMOの相互作用を理解する
⓬ 安全ですみやかなweaningのためのアートとサイエンス—いつ開始して,何を見るのか?知られざる合併症の実態は?
谷口 隼人
1
Hayato TANIGUCHI
1
1横浜市立大学附属市民総合医療センター 高度救命救急センター
キーワード:
weaningトライアル
,
ECBF
,
FdO2
,
SGF
,
中止基準
,
合併症
Keyword:
weaningトライアル
,
ECBF
,
FdO2
,
SGF
,
中止基準
,
合併症
pp.437-445
発行日 2024年7月1日
Published Date 2024/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102201197
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はじめに
ECMO(体外式膜型人工肺)の管理は,航空機の運行管理に似ている。ECMOの導入基準はフライトの実行可能性であり,実際は多職種による入念な準備を要し,離陸に似ている。そしてweaning(離脱)は着陸となるが,それには以下のステップが必要である。
①主病態のピークが過ぎ,自己肺が回復し始める(着陸準備)
②自己肺で酸素化を維持,二酸化炭素を除去できる(降下)
③ECMOによるサポートをオフにする,weaningトライアルを行う(進入)
④カテーテル抜去(着陸・エンジンカット)
①,②については,病態ごと,患者ごとに状況が異なるため,その適切な時期,方法はエビデンスとして構築されていない。一方で,③については,人工呼吸のweaningにおける自発覚醒トライアル(SAT),自発呼吸トライアル(SBT)に類似したプロトコルを用いることで,ECMOから早期に安全にweaningできる可能性が示唆されている1)。実際,航空機のフライトにおいても計器による測定値を用いて自動着陸が可能になっている。ただし,これは自動車のオートクルーズ機能のように操作を簡略化するためではなく,高い安全性を確保しつつ,悪条件でも迷わず目的地にたどり着くための方法の1つであり,すべてのフライトに適応されるものではない。ECMOのweaningも,どんな症例にも当てはまるプロトコルはなく,主治医の判断によるアートと,研究に基づくサイエンスを合わせて,安全かつすみやかなweaningが可能になると考える。本稿では,ECMOの weaningに関する研究についてまとめながら,方法と合併症について解説する。
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