特集 ARDSの今を語り尽くす
❸ ARDSのフェノタイプとprecision medicine—COVID-19パンデミックを経た薬物治療の未来
片岡 惇
1
Jun KATAOKA
1
1練馬光が丘病院 総合救急診療科 集中治療部門
キーワード:
フェノタイプ
,
precision medicine
,
ステロイド
,
診断的異質性
,
高炎症と低炎症
Keyword:
フェノタイプ
,
precision medicine
,
ステロイド
,
診断的異質性
,
高炎症と低炎症
pp.15-26
発行日 2024年1月1日
Published Date 2024/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102201147
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はじめに
precision medicineとは,ゲノム情報や環境要因などに基づいて同一疾患診断患者をさらに分類し,分類に応じた治療方法を選択する治療戦略である*1。近年さまざまな領域でprecision medicineが行われている1,2)。
集中治療領域においては,敗血症や急性呼吸窮迫症候群acute respiratory distress syndrome(ARDS)を中心に,precision medicineが検討されている。それは敗血症やARDSの診断の根底には,ある一定の基準を満たせば診断される症候群という,診断的および病態生理的な異質性heterogeneityがあるからである。ARDSにおいては,American-European Consensus Conference(AECC)定義およびBerlin定義を満たした患者を対象にした無作為化比較試験(RCT)において,はっきりと効果が示された特異的治療はほとんどなく,多くの試みが有意な効果を見い出せずに終わってきた。
本稿では,ARDSのprecision medicineについて,これを実現するために検討されているさまざまな分類と,特に薬物治療について今後の展望をまとめる。
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