特集 熱傷
1.はじめに—熱傷診療は特別なものではない
大須賀 章倫
1
,
真弓 俊彦
2
Akinori OSUKA
1
,
Toshihiko MAYUMI
2
1独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院 救急科
2独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院 ICU診療部
pp.179-180
発行日 2023年4月1日
Published Date 2023/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102201069
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
熱傷診療は急性期の輸液管理に始まり,呼吸・循環管理,手術療法,感染管理,栄養管理,リハビリテーションと集学的な治療を要する。熱傷診療は侵襲学や外傷学の基本であり,熱傷研究からこれらの知見が集積されてきた。まさに熱傷診療は“King of Intensive Care”なのである。しかしながら,我が国では重症熱傷患者の診療は,専門施設であっても年間10例程度であり,多くは数例にとどまっている1)。このような環境において,熱傷診療の質を改善するのは施設単位では困難であることが推測される。そこで2021年に日本熱傷学会から出版された『熱傷診療ガイドライン〔改訂第3版〕』2)が参考になるので,ぜひ一読していただきたい。本ガイドラインから明らかになったことは,熱傷診療に対する確立した「エビデンス」というものの少なさである。
本特集の目的は,熱傷診療に不慣れな施設であっても,最善の熱傷診療が提供されるために,現在の最新の知見を共有することにある。エキスパートの知見は間違いなく「エビデンス」の一端を担うものであり,その蓄積により医療の質が改善してきたことは言うまでもない。そのために診療の最前線に立たれている専門家に無理を言って執筆をお願いした。一方で,偏った意見にならないように,編者および査読者と協議し,私見を削除するのではなく,私見であることを明確にするように努めた。内容は,疫学から熱傷の病態生理,治療戦略と多岐にわたり,我が国の集中治療医に知っておいてほしいことを網羅したつもりである。
Copyright © 2023, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.