特集 移植—ドナー管理と移植の手術手技
Part 1.総論
1.我が国における臓器移植の現状—JOTの使命と役割
林 昇甫
1
Shouho HAYASHI
1
1公益社団法人 日本臓器移植ネットワーク 事業推進本部
pp.459-468
発行日 2020年7月1日
Published Date 2020/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200770
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■はじめに
1997年に「臓器の移植に関する法律」(以下,臓器移植法)が施行され,本格的に日本の脳死下臓器移植がはじまった。その後,臓器提供件数の低迷を背景に2010年に臓器移植法が改正され,本人の意思表示がなくとも家族の総意で提供できるようになり,15歳未満の小児からの臓器提供も可能となった。
2019年12月末現在における臓器提供者数は,脳死下97例,心停止下28例,年間移植症例数が480症例にのぼり,日本で脳死下臓器移植がはじまって以来,提供件数,移植件数ともに最多の年となった。しかし,国内の臓器移植を希望する患者数は14000名に達し,臓器提供者数を大きく上回る勢いで増加しており,いまだ多くの患者が移植を受けられずにいる現状に変わりはない。また,その一方で,臓器提供を決断した家族の抱える葛藤も多様化し,当社団に求められる役割も増している。
本稿では,こうした現状をふまえ,公益社団法人 日本臓器移植ネットワークの取り組みを通して見えてきた今後の方向性などについて述べる。
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