連載 Art of Oncology[3]
託された使命
山内 照夫
1
1聖路加国際病院腫瘍内科
pp.411-413
発行日 2016年7月15日
Published Date 2016/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200104
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Art of Oncology。「腫瘍学の匠の技」。それを私がもち合わせているかは定かでありません。ただ、30年近く前、研修医だった私は、日本の内科医として体系的に深く腫瘍学を学べる場を探していました。
内科病棟で担当した70歳代、男性のKさんは肝硬変から肝細胞がんを発症し、動脈塞栓療法を繰り返し、治療のかいなく最期を迎えました。人の命を救おうと志をもって鹿児島から上京し、研修医となった私にとって、患者が死をむかえた初めての経験でした。Kさんが若い研修医の私に希望を託すうつろな瞳は、今でも忘れられません。その後も多くのがん患者を目の前で失った私は、がんの治療を学びたいという思いに駆られていたのです。当時まだ腫瘍内科という言葉すら聞いたことがないなかで、その瞳に応えるため、私の目は米国のMedical Oncologyに向き始めていました。それからも道のりは平たんではなく、腫瘍内科の専門医資格を得るまでに20年近くかかりました。その間、またその後も何人もの患者との出会いが私を支え続け、今があります。
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