特集 移植—ドナー管理と移植の手術手技
特集にあたって—臓器移植の現状と課題
江川 裕人
1,2
Hiroto EGAWA
1,2
1東京女子医科大学 消化器外科
2日本移植学会
pp.457
発行日 2020年7月1日
Published Date 2020/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200769
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臓器移植は,20世紀において人類が科学と愛を究めて到達した医療の最高傑作である。無償で他人へ自らの臓器を与えることは崇高な行為である。臓器提供者には最高の敬意を払わねばならない。そのために医療者にできることは,提供の意思に応えること,すなわち,臓器を良い状態で臓器不全の患者に届けることと,最高の技術で移植手術を実施し緻密な管理で1日でも長く健やかに生かすことである。その結果,臓器不全の患者が健康になり社会に貢献することで,他者への愛と感謝に満ちた社会が作られる。その理想を実現するために多くの課題がある。
平成29年度の臓器移植に関する世論調査で国民全体の42%が,50歳未満では約60%が,自身が脳死・心停止になったときに臓器提供をしてもよいと答えている。「臓器移植に関する法律」には提供の意思は尊重されなければならないと明言されている。しかし人口100万人当たり提供比率は世界最低ランクで,韓国や台湾の1割である。なぜか? すべての宗教の基本原理は許しと他者への愛であるし,上記の調査結果から宗教や死生観の問題ではないことは明らかである。
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