特集 災害とICU
これからの日本の災害時集中治療を考える
成松 英智
1
,
櫻井 淳
2
Eichi NARIMATSU
1
,
Atsushi SAKURAI
2
1札幌医科大学医学部 救急医学講座 高度救命救急センター
2日本大学医学部 救急医学
pp.239-240
発行日 2020年4月1日
Published Date 2020/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200735
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■課題は少なくない
集団災害の被災地内(あるいは近傍)に位置する病院のICUは,病院の災害対応の中核となり,可能なかぎりの重症患者医療を行う責務がある。
集団災害で重症傷病者が多数発生し,被災地の医療機関のICUで既存の重症医療機能が限界を超えると,それらの対応に関連した多くの問題が発生する。最初に,想定外の業務増加と収容限界超過が問題となる。災害の種類にもよるが,それぞれのICUで平時の主な診療対象以外の傷病,日本ではまれな傷病,除染や医療者の保護を要する傷病等への対応が要求される場合がある。特に災害医療対応のノウハウをもたない,主に救急系以外のICUでは,通常行っている診療以外の不慣れな診療(通常扱わない病態に対する治療のほか,緊急対応の増加への対処,地域・病院レベルの災害時非常体制下の診療など)による現場混乱が想定される。重症患者数がICUの収容限界を超過した場合には,院内におけるICUの拡充(ICU内での臨時増床,非ICU病室の臨時ICU化など)や搬送可能患者の地域内・広域搬送を考慮に入れなければならない。ICUの入退室基準の変更も余儀なくされる。また,地域災害による病院施設損壊,インフラストラクチャー障害,流通障害,人員動員障害,通信障害などの要因により病院機能が低下するような場合には,ICUの機能も障害され低下する。さらに近年の自然災害の多発化・大規模化や第32回オリンピック競技大会・東京2020パラリンピック競技大会をはじめとする巨大イベントに伴う群衆事故やテロリズムなどによる多数重症患者の発生も懸念されている。
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