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神経細胞は細胞膜のイオンチャネルの開閉により,細胞膜の電位を変化させて活動している。よって,1つの神経細胞からは微弱な電流が流れている。しかし電流が微弱であるため,体外からは1つの神経細胞の活動を記録することは困難である。しかし,脳という臓器は,一定数の神経細胞が同期的に働くことにより機能を発揮している1)。このため,多数の神経細胞の同期的な動きを電位の変化として,体外から測定することが可能である。この電位の変化を電気生理学的にとらえたものが,脳波(EEG),聴性脳幹反応auditory brain stem response(ABR),体性感覚誘発電位somatosensory evoked potential(SEP)である。心停止による全脳虚血が生じると神経細胞の膜電位に障害が生じ,電気生理学的な反応に変化が生じる。
本稿では,まず心停止による細胞膜でのイオンチャネルの変化を述べる。そして,心停止後脳障害における神経細胞の障害が,脳波,ABR,SEPに与える影響により,何がわかるかを述べる。さらに,自己心拍再開return of spontaneous circulation(ROSC)後に低体温療法を行った際に測定された持続脳波continuous electroencephalography(cEEG)やBIS(Bispectral Index)での最近の検討を紹介する。
Summary
●神経の電気活動は細胞膜上のイオンチャネルで行われるが,心停止による脳虚血によりこの機能が障害を受ける。
●神経細胞活動の総体をとらえる検査として電気生理学的測定があり,自己心拍再開(ROSC)後症例では,脳波,聴性脳幹反応(ABR),体性感覚誘発電位(SEP)の測定により脳障害の程度がわかる。
●ROSC後症例ではROSC後24時間以降の脳波の測定で,α波がない徐波,平坦脳波,burst suppressionや痙攣様波形の存在,α昏睡がみられると,予後不良である。
●心停止後症候群(PCAS)での低体温療法中や復温後に(ROSC後24〜72時間で検討),SEPで両側のN20がみられない症例は予後が不良である。
●新たな神経モニタリングとしてBISやcEEGがあり,PCASで低体温療法施行中の症例で検討されている。
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