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我が国において「生物・化学テロ」と言って真っ先に思い出されるのは,1995年3月20日に起こった「地下鉄サリン事件」ではないだろうか。化学剤であるサリンを用いた無差別の大量殺傷型のテロであり,国内だけでなく世界中に強い衝撃を与えた。また海外では,2001年の「911」米国同時多発テロや炭疽菌を用いた生物テロ事件が発生しており,ごく最近でもVXガスが疑われる事件が報道されたことにより,国際的緊張の高まりやイスラム過激主義の台頭と相まって,CBRNEテロ災害に対する関心が高まってきている。CBRNEとは,chemical化学,biological生物,radiological放射性物質,nuclear核物質,explosive爆発物の頭文字を取ったアクロニムであり,日本の公的機関ではRとEのない「NBCテロ」と称されることが多い。
我が国では2016年に伊勢志摩サミットが開催されたこと,また今後は2019年にはラグビーワールドカップ,2020年には東京オリンピック・パラリンピックといった大規模な国際大会の開催が控えていることから,CBRNEテロ災害に対する医療対応体制を確立することが急務となっている。本コラムでは,生物・化学テロ対策における関係機関との協力について,2016年5月に開催された伊勢志摩サミットの対応例をふまえて解説する。
Summary
●CBRNEテロ災害に関する関係機関との連携については「NBCテロその他大量殺傷型テロ対処現地関係機関連携モデル」を参照する。
●専門機関として,日本中毒情報センター,国立感染症研究所,放射線医学総合研究所などと連携する。
●CBRNEテロ災害では「all hazard approach」が対応の基本である。
●災害時の基本コンセプト「CSCATTT」に基づき対応する。
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