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2MHzの低周波数超音波を用い,頭蓋骨の薄い部位(側頭骨窓)から脳血管の血流評価が初めて行われたのは1982年1)で,経頭蓋ドプラ法transcranial Doppler ultrasonography(TCD)として普及するようになった。その6年後,日本のFuruhataら2)により,TCDと同様に低周波数(1.8〜3MHz)のセクタプローブを用いて,頭蓋内組織のBモード画像とカラードプラ断層画像を組み合わせ,血流速度を断層画像上に二次元表示させる経頭蓋カラードプラ法transcranial color flow imaging(TC-CFI)が臨床応用された(メモ1)。TCD,TC-CFIは,造影剤などを用いず患者の脳循環評価をベッドサイドで安価で繰り返し持続的に,かつ比較的簡便に行え,合併症もほとんどないという利点を有する。
本稿では,TCD,TC-CFIを用いることによって評価できる生理的変化や病態に伴う脳循環の変化を,集中治療領域の疾患に特化せず幅広く(主にTCDを中心に)概説する。そのなかから,集中治療に応用可能なものをできるだけ参考にしていただければ幸いである。
Summary
●TCDは患者の脳循環の評価をベッドサイドで低侵襲に行えるモニターであり,安価で繰り返し,かつ持続的に施行可能である。
●TCDを用いた側頭骨窓での各血管のソノグラムの描出は熟練を要するが,transcranial color flow imagingやpower motion modeを用いることにより,以前より容易に検出できるようになった。
●TCDで脳血流自己調節能や炭酸ガス反応性の評価が可能であり,これらの障害は脳梗塞,くも膜下出血や頭部外傷患者での予後の判定に役立つ。
●脳血管の狭窄,脳梗塞後の血管の開通性の評価,くも膜下出血後の血管攣縮や頭蓋内圧亢進症例,心停止後脳症や脳死の判定における脳循環の評価にもTCDは有用である。
●TCDは頸動脈内膜剝離術や心臓大血管手術で脳に飛散している微小栓子を微小栓子シグナル(MES)として検出可能であり,気泡性MESと固形性MESを鑑別する方法も考案されつつある。
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