- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
心臓血管外科は,人工心肺の使用による循環停止などの術式の特殊性,「患者の命を完全に預かる」という自覚の強さ,そして術者になるまでの淘汰の厳しさなどの種々の理由から,全世界で普遍的に患者に対するオーナーシップが非常に強い診療科である。他科のバックグラウンドをもつ術後管理医が心臓血管外科医からの信頼を勝ち得ることは決して容易ではなく,その過程でさまざまな軋轢が生じ得る。本稿の前半では,非心臓血管外科医が心臓血管外科術後患者を管理する施設において,程度の差はあれ,おそらく普遍的に生じていると思われる種々の軋轢を,3施設の集中治療医,麻酔科医および心臓血管外科医に対して個人的に行った聞き取り調査*1への回答をもとに浮き彫りにし,それぞれの軋轢に対する分析と提案を行う。
また,実際に手術に立ち会っていない麻酔科医または集中治療医が術後管理を行う場合,その瞬間に同一医師または,同一チームによる治療という継続性は途切れることになる。しかし,同一医師または同一チームによる治療の継続性が途切れたとしても,治療や責任の質についての継続性までが途切れてしまったのでは,患者が大きな不利益を被ることになる。担当医師またはチームの交代による治療および責任の継続性を保つための努力が“申し送りhandover”であり,この申し送りの質がその後の治療の質を決定すると言っても過言ではない。本稿の後半では,文献のレビューと東京ベイ・浦安市川医療センター(以下,当院)での経験を通して,効率よく,質の高い申し送りと引き継ぎのために,“申し送りの標準化”について提案する。
Summary
●よりよい術後管理のために,心臓血管外科医と術後管理医が良好な関係を築くには,両者の努力が不可欠である。
●心臓血管外科医と術後管理医の軋轢には,専門科のバックグラウンドの違いから生じるもの,任せる側と任される側という立場の違いから生じるものがあると考えられる。
●効率よく,質の高い申し送りと引き継ぎを行うためには,“申し送りの標準化”が重要である。
Copyright © 2015, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.