特集 心臓血管外科 前編
術式別に学ぶ心臓血管手術:重症心不全
3.機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する外科手術の適応とタイミング
宝来 哲也
1
Tetsuya HORAI
1
1北里大学病院 心臓血管外科
pp.871-877
発行日 2015年10月1日
Published Date 2015/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200228
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
機能性僧帽弁閉鎖不全症とは一般に,拡張型心筋症あるいは虚血性心疾患症例で,弁尖の器質的病変や乳頭筋・腱索などの弁下組織の明らかな異常がないにもかかわらず,二次性に僧帽弁逆流mitral regurgitation(MR)を生じるものをいう。心筋障害の病因別に,虚血性心疾患に伴うものを虚血性僧帽弁閉鎖不全症(ischemic MR),拡張型心筋症に伴うものを非虚血性僧帽弁閉鎖不全症(non-ischemic MR)と分けることもあるが,病態的に同等の機序であり,2つの因子が関与している。第1は,左室のリモデリングによる乳頭筋の外側あるいは心尖部方向への偏位により,僧帽弁のテザリングを生じることによる収縮期の閉鎖障害であり,これが発生機序の主因である。第2は,弁輪拡大であり,それも逆流の要因となる。テザリングとは“鎖などで繋がれた”という意味をもっており,“弁尖が偏位した乳頭筋に繋がれているために動きが制限されている”というような状態を示している(図1)。
Summary
●機能性僧帽弁閉鎖不全とは,心筋障害によって左室乳頭筋が偏位することで生じるテザリングが原因の僧帽弁逆流である。
●有症状の重度僧帽弁逆流は手術適応と考えられ,冠動脈バイパス術など他の心臓手術を行う際には,中等度逆流や無症状症例も外科的介入を考慮する。
●機能性僧帽弁閉鎖不全に対する僧帽弁手術には,弁輪形成術,弁下組織への付加手技,僧帽弁置換術があり,テザリングの度合いによって,術式が選択されることが多い。
●低心機能症例がほとんどであり,術後の血行動態管理には注意が必要となる。
Copyright © 2015, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.