特集 ICUで遭遇する血液疾患
Part 2 血液内科のクリティカルシンドローム
3.血液疾患およびその治療に伴う重症合併症
3-3.血球貪食性リンパ組織球症/血球貪食症候群—抗菌薬不応性の持続性発熱をみたら本症を鑑別に挙げ,フェリチンを測定
森本 哲
1
Akira MORIMOTO
1
1自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児科
pp.343-351
発行日 2015年4月1日
Published Date 2015/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200166
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
血球貪食性リンパ組織球症/血球貪食症候群(HLH/HPS)(以下HLH)は発熱を主症状とし,その名の示すとおり活性化したマクロファージによる血球貪食を特徴とする症候群である1)(図1)。過去には,組織球の異常と考えられ,網内系組織球症や悪性組織球/細網症と呼称されていたが,異常の本質はリンパ球にあることが明らかになり「リンパ組織球症」と呼ばれるようになった。その病態は,サイトカイン過剰分泌による制御不能な免疫活性化である。「血球貪食」は特徴的な所見であるが必須所見ではなく,より病態を表す名称として「hyperinflammatory lymphohistiocytosis(HLH)」に変更しようという意見もある。本症を発症した場合,急速に汎血球減少,播種性血管内凝固(DIC)が進行し,多臓器不全に陥ることが多い。このため,迅速な治療介入が必須であり,治療と並行しながら原疾患の診断を進める必要がある。本稿では,HLHの疫学,診断および治療方針について概説する。
Summary
●抗菌薬に不応性の持続性発熱をみたらHLHを鑑別に挙げ,フェリチンを測定する。
●HLHは,フェリチン高値,可溶性IL-2受容体高値,肝脾腫,血球減少,播種性血管内凝固,LDH高値が特徴的所見で,骨髄に血球貪食組織球が増加する。
●単一遺伝子病である一次性HLHと,EBウイルス感染症・悪性リンパ腫,自己免疫疾患などに合併する二次性HLHに分けられる。
●いずれの場合も,制御不能の高サイトカイン血症が共通した病態であり,直ちに,サイトカインを抑制する必要がある。
Copyright © 2015, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.