特集 PCAS
Part 3 心拍再開後の治療
3.低体温療法中の合併症—合併症により予後は悪化するか
安田 英人
1,2
Hideto YASUDA
1,2
1武蔵野赤十字病院 救命救急センター
2亀田総合病院 集中治療科
pp.707-717
発行日 2014年10月1日
Published Date 2014/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200108
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
心停止後症候群post cardiac arrest syndrome(PCAS)に対する低体温療法は2002年に大規模な無作為化比較試験(RCT)1,2)が発表され,世界的に注目されるに至った。ところが,近年では,平常体温で管理する場合と比べて予後改善にはつながらない可能性を示唆したRCT3)も発表されており,低体温療法の有用性に陰りが生じてきた。しかし,心停止という最大の侵襲に曝された脳は,不可逆的な経過をたどる可能性があるために,少しでも脳保護につながる可能性がある治療は施行したいと考えるのは自然なことである。一方で,低体温療法では低体温の生理的反応から生じるさまざまな合併症が懸念され,臨床家は治療の効果と合併症を天秤にかけて適応を考慮しなければならない。
では,低体温療法による合併症は本当に臨床的にも問題があるのか,予後悪化につながるのか,これまでに報告されている文献から検証してみたいと思う。
Summary
●ROSC後における低体温療法に伴い,体温変化のさまざまな段階において,血行動態の変化,凝固異常,電解質異常,免疫能低下などの生理学的変化が起こる。
●無作為化比較試験の結果を参考にすると,ROSC後における低体温療法は平常体温管理と比較して,有意な合併症増加に至らない。
●ROSC後において,低体温療法を施行した患者の合併症のなかで死亡と関連がある因子は高血糖と抗てんかん薬を必要とする痙攣のみであった。
Copyright © 2014, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.