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ICU入室患者家族の心理的特徴に関する先行研究1~5)では,患者がICUに入室している間,家族には高い割合で不安や抑うつの症状が認められると明らかにされた(表1)。最新の報告6)では,家族の43.5%が睡眠障害を抱え,それらに影響する要因として不安(43.6%),緊張(28.7%),恐怖(24.5%)が指摘されている。私たちにはこのような心理状況下におかれる家族を,短時間のうちに理解し,援助することが求められる。
今や家族ケアに対する満足度はICUにおけるquality indicatorとして使用され始めており,ICUに従事する医療者にとっても,関心の高い領域の1つである。しかしながら,我が国では家族ケアについて専門的な教育を受けた医療者は少なく,個々の判断や努力で行われているのが現状ではないだろうか。特に,患者の救命や回復が最優先されるICUにおいて,限られた人的,時間的資源のなかで心理的動揺の強い家族をケアすることは容易ではない。
家族ケアの方向性は多岐にわたるが,今後,家族ケアが“ICUのルーチン”として定着していくために,本稿では,「家族ニードの充足」と「意思決定支援」,「医療者-家族間のコミュニケーション」の3つのキーワードを取り上げ解説する。
Summary
●ICU入室患者の家族は,高い割合で不安や抑うつ症状を有している。
●一般的に,重症患者家族のニーズでは,「保証」「情報」「接近」の重要性が高い。
●家族員の入院により多重ストレスを抱える家族へのケアとして“ニーズを充足させること”は,理論的にも,実践的にも効果の高い介入である。
●自ら判断できない患者に代わり,家族が意思決定の役割を担うことは,家族の精神健康状態を悪化させることもあれば,終末期ケアに対する満足度を高める可能性もある。
●意思決定支援の基本は,“shared decision-making”であり,家族カンファレンスを通して最善の意思決定を支援していくことが望まれる。
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