増刊号 現場で“パッ”と使える 免疫染色クイックガイド
4章 ポイント解説 免疫染色の原理
多重染色
柳田 絵美衣
1,2
1慶應義塾大学医学部病理学教室
2慶應義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット
pp.1099-1114
発行日 2018年9月15日
Published Date 2018/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543207359
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重染色の手順
■免疫多重染色
現在,免疫組織化学染色(以下,免疫染色)は病理診断,病理検査において重要な役割を果たしており,現在に至るまでに多くの技術的改良がなされた結果,多種多様な手法や応用法が存在している.そのなかでも免疫多重染色は同一切片・同一細胞上で複数の抗原局在を同時に検出し,それらの相互関係を証明することが可能な応用法の1つである.
免疫多重染色には蛍光抗体法多重染色と酵素抗体法多重染色があり,前者は以前から研究の場で幅広く使われている.感度も高く,信頼性の高い方法であるが,診断病理の現場ではほとんど用いられていない.その理由として,暗視野顕微鏡での観察が必須であるため,組織構築(背景)の確認が困難であることが挙げられる.それに対して酵素抗体法多重染色は,明視野顕微鏡での観察が可能であるため,組織構築の観察・確認が容易である.しかし,電子的なマージが可能である蛍光抗体法とは異なり,対象とする複数の抗原の局在が重なる,または近接している場合には共発現の評価が困難となる.さらに,手技が煩雑で所要時間が長いことから,酵素抗体法多重染色も診断現場では敬遠されてきた.
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