特集 疼痛・興奮・譫妄
9.集中治療における譫妄の疫学―ICUという環境が発症率を高めるのか?
片岡 惇
1
,
安田 英人
2
Jun KATAOKA
1
,
Hideto YASUDA
2
1武蔵野赤十字病院 救命救急センター
2鉄蕉会亀田総合病院 集中治療科
pp.73-82
発行日 2014年1月1日
Published Date 2014/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100621
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ICUにおける譫妄は,かつてはICUという環境によってもたらされる一時的かつ良性の合併症であり,認知度も低かった。しかし今日では,人工呼吸器装着期間,ICU滞在期間や病院滞在期間を延長させ1,2),医療費増大3)のみならず,死亡率上昇4~6),ICU退室後の認知機能障害にも関係する7)主要な合併症の1つとされている。しかしながら,日本の医療現場では譫妄を深刻な合併症であるとする理解は,いまだ十分に得られているとは言えないのではないだろうか8)。
本稿では,譫妄の分類・頻度および譫妄がICU患者に与える影響について解説し,集中治療における譫妄を認知することの重要性に関して理解を深めたい。
Summary
●ICUにおける譫妄は,評価法が登場する以前には,認知度が低く過小評価されてきたが,評価法の登場により広く認知されるようになり,重要性に対する理解が深まった。
●譫妄の重要な分類として,hyperactive delirium/hypoactive delirium/mixed-type deliriumがある。ICUにおいてはhypoactive deliriumが多く,症状が出現しにくいために過小評価されている可能性がある。
●ICUにおける譫妄発症率は30~80%台とさまざまな報告があるが,その要因として患者重症度が高いことや背景にさまざまな病態があることが関係しており,ICU環境が発症に関与しているかどうかは定かではない。
●ICUにおける譫妄は,人工呼吸器装着期間,ICU滞在期間や病院滞在期間を延長させるとともに,生命予後や認知機能の悪化にも関連し,医療費を増大につながる。
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