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日本における心不全の疫学はほとんど存在しないが,超高齢社会のなかで,その患者数は2010年に108万人,試算では,2030年に132万人に達する1)と考えられている。米国では,580万人近くの心不全患者がおり,そのうち20万人が米国心臓協会/米国心臓学会(ACC/AHA)慢性心不全ガイドライン2)Stage D患者であるといわれている。また,米国における機械的循環補助の市販後患者登録機関であるInteragency Registry for Mechanically Assisted Circulatory Support(INTERMACS)3)によれば,2012年6月現在,北米では6633人が人工心臓を使用している。
一方,日本では,1997年に臓器の移植に関する法律(臓器移植法)が施行され,New York Heart Association(NYHA)Functional Classification Class IV,あるいはACC/AHA慢性心不全ガイドラインStage Dのような,重症心不全症例に対する心臓移植の道も開けた。
2010年に臓器移植法が改正されたが,今なお日本の心臓移植待機時間は900日近くに及ぶ。そのようななか,心臓移植までのつなぎの治療である心臓移植ブリッジbridge to transplantation(BTT)(表1)使用を目的に,2011年4月,植込み型補助人工心臓2機種が保険償還された。人工心臓を理解するうえで必要な知識として,種類や機能について概説し,その適応について述べる。
Summary
●重症心不全に対する心室補助人工心臓ventricular assist device(VAD)の使用は,未来の治療法,あるいは一か八かの治療法ではなく,すでに実用域に入り始めている。
●VADの導入には予後に影響するタイミングがあり,心不全評価として最大酸素摂取率やスコアリングなどを用い,多臓器不全が進行しないうちに移植登録を完了させ,VADを導入することが必要である。
●欧米では,移植不適格患者や,より軽症な心不全患者へ移植代替療法destination therapyとしてVADの植込みを行うことが急増しており,日本でも導入すべきか議論する必要がある。
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