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小児や新生児に適用される医療技術は,まず成人の領域で確立されたのちに,小児,そして新生児患者へと応用されることが一般的である。しかし,体外式膜型人工肺extracorporeal membrane oxygenation(ECMO)は,新生児医療から始まって,小児・成人医療へと発展している。このような経緯をたどる医療技術として,高頻度振動呼吸high frequency oscillation(HFO),一酸化窒素(NO)吸入療法,サーファクタントの気管内投与なども挙げられる。一般に,新生児や小児は,成人と異なる病態を有していると考えられがちであるが,なかには共通の病態も存在する。病態が共通であれば,新生児で成功した治療法が,年長の小児や成人でも有効な可能性がある。一方,共通していない部分を考慮して,新生児と異なるアプローチが必要になることもある。
新生児や小児領域でのECMOの適応は次のように大別できる。
●呼吸補助
新生児の呼吸補助
小児の呼吸補助
●循環補助
●蘇生の一環としての使用
本稿では,新生児や小児に対してどのようにECMOが用いられているかについて,歴史的な背景も交えて述べる。なお,筆者らは国立成育医療研究センターの前身の国立小児病院時代から,新生児や小児患者に対してECMOを行っている。それらの経験1~3)は別に報告をしているので参照されたい。
Summary
●新生児の呼吸補助としてのECMOにおいて,生存率は胎便吸引症候群(MAS)に対しては90%以上を示すが,先天性横隔膜ヘルニア(CDH)に対しては50%程度にとどまる。
●小児の呼吸補助としてのECMOにおいては,基礎疾患のない肺のみの単一臓器不全の患者での生存率は70%程度を示すが,基礎疾患を有する患者での呼吸不全に対しては,これよりも成績は悪い。
●急性心筋炎による心原性ショックに対してのECMOでは,生存率は60%程度である。
●敗血症性ショックに対してのECMOでは,胸骨正中切開でのatrio-aorticカニュレーションを用いた方法の有効性が示唆されているが,今後症例を蓄積のうえ,再検討が必要である。
●ECMOを用いた心肺蘇生法では,どのような患者を適応とするかなど,今後検討すべき問題が多い。
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