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ECMO管理において,合併症を理解し,未然に防ぐことが重要であるのは言うまでもない。2009~2010年に発生したH1N1インフルエンザパンデミックによる重症急性呼吸窮迫症候群acute respiratory distress syndrome(ARDS)の治療で明らかとなったように,傷害肺が回復するまで1か月以上にわたるECMO管理が必要になることもあり,いかに安定した管理ができるかが治療成績を左右する。
合併症は回路関連要素と患者関連要素に分けることができる。より頻度の高い回路関連合併症は,回路内血栓,カニューレトラブル,人工肺不全である。患者関連合併症では,穿刺部位・手術部位・消化管からの出血が高頻度にみられ1,2),出血と感染症は重篤な合併症となる。Broganら3)の研究によると,ECMO中の死亡と関連する因子は回路損傷,心肺蘇生の実施,中枢神経障害,消化管もしくは肺出血,動脈(血液)pHの異常(<7.20または>7.60),カテコールアミン使用と腎不全であった(表1)。
我が国ではH1N1インフルエンザパンデミック時の回路関連合併症を78.6%(11/14症例)で認めた,とTakedaら4)は報告しており,欧米の実態とは大きく異なる(表2)。その理由の1つはTakedaらの指摘どおり,我が国と欧米では使用されているECMO回路が異なっている点や,1施設当たりの症例数が少ない点であろう。現状では我が国の合併症発生率を国際レジストリなどと同等に扱うことは困難であり,本稿では主にELSO(Extracorporeal Life Support Organization)RegistryのECMO合併症に関して述べる。
Summary
●ECMO管理中の合併症には,回路関連合併症と患者関連合併症がある。欧米のECMOセンターに比べて,我が国の合併症発生率は高いと言わざるを得ない。
●患者関連合併症は出血,感染症が多い。特にカニューレ刺入部のトラブルが多く,その管理には十分注意を払う必要がある。
●ECMO管理中は,胸腔穿刺など不要な侵襲的処置を避けるべきである。
●回路関連合併症は近年減少しているが,いずれも重篤な合併症をきたすため,医療スタッフはECMOの構造を理解し,さまざまなトラブルを想定した訓練を行うべきである。
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