特集 急性冠症候群
【コラム】心臓MDCTはERでの胸痛患者に対して有用か
伊藤 大樹
1
Hiroki ITO
1
1あおばクリニック
pp.46-47
発行日 2013年1月1日
Published Date 2013/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100498
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心臓MDCT
1994年に登場したmulti-detector computed tomography(MDCT)と心電図同期スキャン技術ECG-synchronized techniqueにより,冠動脈を非侵襲的に描出することが可能となった。当初は4列であったMDCTも,現在は64~320列となり,高性能のMDCTが日本の臨床現場で使用されるようになっている(図1)。なお,実はdetectorの数が増えても,空間分解能は不変で,より詳細な画像が得られるわけではないことに注意されたい。しかし,より短時間で撮影することが可能となるので,心拍動や呼吸によるアーチファクトを減らすことができる。
さて,MDCTは形態学的検査であり,ACSが疑われる胸痛患者に対しては「冠動脈狭窄率≧50%」を陽性所見とするのが一般的である。30日以内の重要心血管イベントmajor adverse cardiac event(MACE)すなわち,心筋梗塞+冠動脈血行再建術+心停止+全死亡をアウトカムの指標とした場合,低~中等度リスク胸痛患者における心臓MDCTの感度sensitivity,特異度specificity,陽性的中率positive predictive value(PPV),陰性的中率negative predictive value(NPV)は,それぞれ約93%,90%,48%,99%1)と報告されている。この数値を噛み砕いて表現すると,心臓MDCTをACSの可能性がある胸痛患者に対し施行した場合,
「陽性でも約半分はスカ!」
その代わり,
「陰性なら9割9分ACSを否定できる!」
ということになる。
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