特集 CRRT
18.「特集 CRRT」解説―(1)「常識common sense」を疑い,「常識standard」を身につけよう
柴垣 有吾
1
Yugo SHIBAGAKI
1
1聖マリアンナ医科大学病院 腎臓高血圧内科
pp.421-422
発行日 2010年4月1日
Published Date 2010/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100304
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私のCRRTとの出会いは,東京郊外にある3次救急指定病院の救命センターでレジデントをしていた卒後2年目の時である。その頃は,上の先生に言われたことを下位運動ニューロンのように患者に行うような状態であり,CRRTとは何かについてまともに考えたことはなかったのが正直なところである。毎日のように詰まる回路を交換し,プライミングをするだけで終わるような日々であった。当然,CRRTの有効性や,なぜそのモードを使うのか,なんてことは考えず,ひたすら,状態の悪い腎機能低下患者にはCHDFをやるという世界だった。
しかし,米国での臨床研修を経験し,私のCRRTの常識は実は常識ではないことを思い知らされた。そもそも,日本ではCRRTの原理なんてものは考えたことはなかった(というか,腎臓内科医にもかかわらず血液透析の原理さえ,きちんと系統だった教育を受けていなかった)。しかし,evidence以上にefficiencyが非常に重要視される米国では,evidenceがない治療法は,少なくとも理論的に武装しないと認められないため,透析の効率を高めるための原理の理解が必須と考えられていた。CHDFと比較して,CHFは効率が大差なく,安いとなれば,CHFが当然選ばれる。携帯電話や車に余計な機能を付けなくても,本来の機能(電話をかける,走る)が同じように果たせれば,安くてシンプルな物のほうがよい,というのは十分納得できる考えである。
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