巻頭言
大学でのResearchとCommon sense
𠮷村 玲児
1
1産業医科大学精神医学
pp.896-897
発行日 2015年11月15日
Published Date 2015/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205052
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Universityはラテン語のuniversitas(全体・宇宙・世界)が語源である。uni=1つに,vursus=向きを変えた,転じて1つの目的を持った共同体という意味である。医学部の場合は医学(基礎医学および臨床医学)を行う目的を持った共同体ということになろう。しかし,昨今の臨床偏重主義の弊害も影響し,近年の若い医師のリサーチへのモチベーションの低下が臨床医学を支える基礎医学の質の低下を招いている。専門医になることや高度な手技を身に付けることばかりに関心が行き(これも確かに重要なことであるが),じっくりと科学と向き合うことに魅力を感じない医師が増えていると感じるのは単に私の杞憂であろうか。この原因は医学部学生や医学部出身者の意識の問題のみに帰結できない。医学部の6年間は,医師国家試験合格が当面の課題であり,そのための勉強に忙しく,研究に関する勉強まで手が回らないのが実状である。研修医になってからも,臨床現場の対応に追われ,若手医師が研究に携わる十分な余裕はない。たとえ基礎研究医を目指しても,ポストは限定されており,待遇も満足とはいえないことも問題である。
しかし,基礎研究の充実なくして医学・医療の高度化の実現はない。国もこの事態に対応すべく,基礎研究者の増加を促進しようという方針を打ち出した。文部科学省では「基礎・臨床を両輪としたグローバルな医師養成推進委員会」を設置し,2012年4月に,大学改革推進等補助金による助成を行う22件のプログラムを選定したが,そのうち10件は,「医学・医療の高度化の基盤を担う基礎研究医の養成」を目指すプログラムである。
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