今月の主題 高齢者医療の新しい視点
高齢者診療上の問題点
高齢者における薬物投与量の問題点
秦 葭哉
1
1杏林大学医学部高齢医学
pp.1285-1289
発行日 1995年7月10日
Published Date 1995/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402903731
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ポイント
●高齢者では腸管からの薬物吸収能は成人一般に比べて低下傾向にある.
●高齢者では血漿蛋白,特にアルブミンの低下が起こっているため,薬物は蛋白と結合できず,遊離型のまま血中に遊出することになり,効果が増強される.
●高齢者では肝実質細胞数の減少,肝重量の減少,肝血流量の減少があるため,薬物の解毒能は低下している.
●また,脂肪組織が相対的に増加しているため,脂溶性薬物の体内蓄積の可能性が高く,一方,体内水分量が減少しているため,水溶性薬物の血中濃度が高くなる.
●腎臓は加齢によりクリアランスが低下しているため,投与された薬物が予測した以上の効き過ぎを示すこともある.
●したがって,高齢者に対する薬物投与量は,成人投与量より少なくするのが基本である.原則的には成人常用量の1/2とする.至適量を投与するには,薬物の未変化体尿中排泄率とクレアチニンクリアランス値から計算する.
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