特集 重症感染症
11.免疫不全と重症感染症―(7)糖尿病患者における重症感染症
神谷 亨
1
Toru KAMIYA
1
1洛和会音羽病院 感染症科
pp.189-194
発行日 2010年1月1日
Published Date 2010/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100274
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糖尿病ではなぜ感染症が生じやすくなるか?
一般的に,糖尿病では感染症が生じやすくなると考えられているが,そのメカニズムのすべてが解明されているわけではない1)。多くの臨床研究では,血糖コントロール不良と感染症罹患の因果関係を示唆しているが,因果関係がないとする臨床研究もあり,高血糖が感染症罹患の独立した危険因子なのか,インスリン抵抗性やインスリン不足などの他の因子が関係しているのか,いまだ結論は出ていない1)。
糖尿病で感染症の罹患が多くなる理由として考えられているものは,宿主の因子として,①好中球の遊走能,接着能,貪食能,オプソニン作用,細胞内殺菌能の低下,②細胞性免疫能の低下,③末梢血管障害による組織の虚血状態が,微好気性・嫌気性微生物の増殖を促進し,白血球の酸素依存性殺菌能・局所の免疫応答・抗菌薬の吸収を低下させること,④末梢神経障害による皮膚潰瘍病変などから微生物が侵入し,しばしば感染の発見が遅れること,⑤自律神経障害による神経因性膀胱が尿路感染症を生じやすくすること1,2),などがあり,微生物側の因子として,糖尿病性ケトアシドーシスでは遊離鉄イオン濃度が上昇して接合菌の増殖を促すこと3,4),などがある。表1に,糖尿病患者に生じる感染症をカテゴリー別に示す。以下,糖尿病に関連する代表的な重症感染症について解説する。
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