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好中球減少時の感染症は,内科的エマージェンシーである。好中球が減少することにより,感染症を発症するリスクの増加や,発症時の重症化をもたらす1,2)*1。しかし,好中球減少時であっても,基本的には感染症診療の原則にのっとって治療が行われるべきであり,例えエマージェンシーであっても「背景」や「臓器」から「起因菌」を推定する原則は変わらない。ただし,始めに行うべきことは,「好中球減少時の感染症」であることを認識し,内科的エマージェンシーであることを確認して,empiric治療を直ちに行いつつ,原因を検索し治療していくことである。
発熱性好中球減少症febrile neutropenia(FN)では,多くのガイドラインなどが出ており,いずれも上記の流れを紹介している。この分野では多くの研究がなされてきており,引き続きガイドラインや論文などを中心に紹介する。しかし,好中球減少時においては必ずしも発熱が表現されているわけではなく,その他の所見も乏しい傾向があり3),好中球減少時には発熱だけではなく,低体温や低血圧などバイタルサインにより敏感になる必要がある4)。また,現時点で正式に公開されているものとしては,2002年に米国感染症学会(IDSA)から出ている発熱性好中球減少症のガイドラインがあるが,2007年にドラフト版5)がIDSA総会で発表されており,ホームページ上でも公開されている。その内容についても一部触れる。
好中球減少時の感染症を考えるうえで大事なことは,「好中球減少の程度」と「好中球減少の期間」である。いずれも先に述べたとおり,好中球減少症では重症化しやすいが,特に好中球減少の期間が5日間を超えてくるかどうかで想定される起因菌が変わるため,その後の診療の流れが大きく変わる。このため,5日以内で考えるべきことを「好中球減少時の感染症診療の初期の流れ」の項で,5日目以降を「発熱性好中球減少症5日目以降の流れ」の項で述べる。どのような重症であったとしても,好中球減少時にはこのアルゴリズムにそって,確実な診療を行う必要がある。
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