特集 重症感染症
10.小児重症感染症に対するアプローチ―成人との違い
齋藤 昭彦
1
Akihiko SAITOH
1
1国立成育医療センター 第1専門診療部感染症科
pp.113-120
発行日 2010年1月1日
Published Date 2010/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100266
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我が国では,小児集中治療専門医の絶対数が少ない。小児の集中治療を行っている多くの施設では,成人の集中治療専門医が小児科医と一緒になって,あるいは,一般の小児科医が日常の小児科業務と併任しながら,その診療にあたっているのが現状である。小児の重症感染症は,成人のそれと比べて進行が速く,症状,徴候に乏しく,また,検査によって得られる客観的情報に限りがある。したがって,早期に重症感染症の評価をすることが極めて重要である。患児の見かけの印象(general appearance),バイタルサイン,問診,身体所見,限られた検査結果などの客観的データから総合的に判断して,その評価を行わなくてはならない。
重症感染症の治療は,成人と同様,患者が重症であることから,empiricな広域の抗菌薬が使われる。ただし小児では,年齢によって,重症感染症をきたす起因菌が異なるので,その選択には,十分な注意が必要である。初期治療開始後は,治療への反応,培養結果を総合的に判断して,empiric therapyから,ターゲットを絞った病原体へのdefinitive therapyに移行するか,感染症が否定できれば,抗菌薬を中止する。これをすみやかに行うことは,抗菌薬の適正使用につながり,その患者の予後,死亡率,そして,長期的には,集中治療室,病院全体の耐性菌の頻度,パターンにも大きな影響を与える。
本稿では,小児感染症専門医の立場から,集中治療室における小児重症感染症に対する重要なアプローチと,見逃してはならない小児の重症感染症について述べる。
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