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本稿では熱の原因がわからない場合のアプローチについて述べる。
集中治療室(ICU)入室患者の診察は難しい。病歴は取りにくい。ものを言わず,ひっくり返すことも容易でない患者の限定された診察で,「この患者には肺炎はない」とか「尿路感染はない」と断定するのは困難である。筆者は医療における「ルーチン」を積極的に支持はしないが,ICUの発熱患者において(最低)血液培養2セット,喀痰培養とグラム染色,胸部X線撮影,尿検査,尿培養はほぼ全例に必須であると考えている。それは,「ルーチンであるから」というよりも,そうせざるを得ない「必然」が背後にあるからである。
某大学病院では,ICUの発熱患者であっても喀痰や尿のワークアップが行われていないケースが目立つ。血液培養の重要性がようやく認識され始め,発熱患者に対する血液培養の普及率は高まってきたのだが,「なぜ血液培養を採るのか」といった,深化したレベルで必要性が理解されていないからである。「熱が出たらとりあえず血培を採っておけ」というパターン認識に基づいているだけなのである。だから,血液培養だけを採る。尿路感染症というアセスメントがあるにもかかわらず採尿をしていないという,あり得ない(と筆者には感じられる)ケースも目立つ。
逆に,毎週定期的に喀痰や尿の培養検査を全患者に行っている病棟もある。無症状の患者の気道や尿から菌が検出されたとしても,それは治療の対象にはならない。ICUであっても検査の際には「理にかなった」方法論を採ることが望まれる。米国集中治療学会 American College of Critical Care Medicineと米国感染症学会 Infectious Diseases Society of Americaによる『ICU患者の発熱ガイドライン』1)でも,病歴と診察による患者の見積もりを行ってから各種検査をオーダーするよう推奨している*1。たとえICUであっても,絨毯爆撃のような検査の嵐を無秩序に行うと,そこに待っているのは混乱だけなのである。熱の原因を探るときは,検査のオーダーを出す前によくよく考えることから始めたい。
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