特集 重症感染症
8.海外渡航歴と重症感染症―海外渡航関連感染症とは
加藤 康幸
1
Yasuyuki KATO
1
1国立国際医療センター戸山病院 国際疾病センター
pp.91-102
発行日 2010年1月1日
Published Date 2010/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100263
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パンデミックインフルエンザ(H1N1)が,2009年5月初旬,渡航者関連感染症(輸入感染症)の性格を帯びていたことは記憶に新しい。これは,発生地である北米のパンデミックインフルエンザ有病率と日本でのそれに大きな差があったことによる。その後,インフルエンザは短期間に世界に伝播し(パンデミック),渡航者関連感染症としての側面はすっかり失せてしまった。一方,感染症のなかには,媒介動物の生態などにより容易に拡散せず,常在地(endemic area)が限定される疾患も多い(古い表現を借りると風土病という)1)。後述するマラリアなどの熱帯感染症は,その代表的なものである。これらの疾患は,常在地でないところでも問題となる。まれな疾患であるため,医師の鑑別診断にも挙げられず,診断や治療に遅れが生じることになりやすいからである2,3)。本稿では,特に集中治療医にとって最も遭遇する可能性が高い熱帯熱マラリアに重点を置きながら,渡航者関連感染症を概説する。
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