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重症患者における急性腎傷害(AKI)は,多臓器不全の一部分症として発症することが多く,治療の一環として栄養管理は重要となる。その栄養管理を行う際には,AKIによる代謝異常に加え,重症病態を引き起こしている基礎疾患,導入された血液浄化法による影響など,さまざまな因子を考慮しなければならない。近年,重症患者における早期経腸栄養(ICU入室後24~48時間以内に開始)による合併症発生率の減少やICU滞在期間の短縮など,その有用性が示唆され,導入できる場合は早期に経腸栄養enteral nutrition(EN)を開始すべきと推奨されている1)。一方で,経静脈栄養parenteral nutrition(PN)の使用に関しては,その適応は厳しく制限されている。ASPEN(American Society for Parenteral and Enteral Nutrition)のガイドライン2)では,入院時すでに栄養不良状態が存在し経腸栄養に耐えられない場合,もしくは,経腸栄養開始後7~10日経過しても目標投与カロリーを投与できない場合に限り,経静脈栄養開始や経静脈栄養併用を考慮してもよい,とする程度のスタンスである。したがって,AKI合併重症患者においても,まずは経腸栄養を主軸に据えた栄養管理が求められるだろう(図1)。
それではいったい,どの程度エネルギーやタンパク質が必要になるのだろうか。同じAKI合併患者であっても,侵襲を受けた時点の栄養状態や,基礎疾患の重症度,合併症,タンパク異化亢進の程度は異なるため,一概にまとめることはできず,個々の患者の栄養状態や重症病態を把握し,それに見合った栄養投与計画を立てることが重要になる。
本稿では,AKIを合併した重症患者における代謝異常や,実際の栄養管理について,文献やガイドラインを参考にまとめる。
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