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急性膵炎は,形態的に膵周囲の軽度の脂肪壊死と間質の浮腫を特徴とする浮腫性膵炎と,膵内外の広汎な脂肪壊死と実質壊死を伴う壊死性膵炎に分類される。膵炎の80~90%は浮腫性で,特殊な治療を必要とせず軽快するが,10~20%は壊死性で,その死亡率は14~25%に達する。細菌感染を認めない非感染性膵壊死では死亡率は0~11%であることから,保存的治療が原則とされている。その一方で,膵臓の壊死組織に細菌感染を合併する感染性膵壊死では死亡率は30~40%と極めて高いため,我が国のガイドライン1)ではnecrosectomy(壊死巣除去術)が標準的な術式とされている。しかし,最近ではIVR(インターベンション治療)や低侵襲necrosectomy(内視鏡,鏡視下,低侵襲アプローチ外科手術)の有用性2,3)が多く報告され,さらにCTガイド下経皮的ドレナージの初期治療としての有用性4)を示す報告が増加している。このような状況から,「感染性膵壊死にnecrosectomyは必要か?」という疑問さえもたれるようになっている。
この疑問を解決するには,まず急性膵炎に伴う膵局所感染症の分類の再検討が必要である。1992年のアトランタ分類で定義がなされた膵膿瘍pancreatic abscessの存在自体が最近疑問視されるようになり,新たにwalled-off pancreatic necrosis(WOPN)*1という概念5~7)が登場してきた。この概念と定義を理解することが,necrosectomyの必要性を理解するうえで重要である。本稿では,膵膿瘍という用語が廃止され,WOPNに統一されることになった経緯を述べるとともに,感染性膵壊死と被包化膵壊死(WOPN)の関係と治療方針を解説することにより,「感染性膵壊死にnecrosectomyは必要か?」という疑問を解決したい。
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