特集 急性膵炎
2.抗菌薬(予防的投与)に関するpro/con―(2)con:予防的投与は重複感染のリスクを高める
大野 博司
1,2,3,4
Hiroshi OONO
1,2,3,4
1洛和会音羽病院 ICU/CCU
2洛和会音羽病院 腎臓内科
3洛和会音羽病院 感染症科
4洛和会音羽病院 総合診療科
pp.617-620
発行日 2011年10月1日
Published Date 2011/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100089
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急性膵炎は,保存的治療のみで自然軽快する軽症例から,臓器不全や感染性合併症を起こし集学的治療が必要となる重症例まで,経過が多彩である。重症膵炎は急性膵炎の約20%を占めるが,補助的治療の進歩にもかかわらず最重症例の死亡率は30%を超える1)。重症膵炎で,膵壊死は早期で患者の25~40%に起こり,初期の多臓器機能不全をのりきった例でも,死亡例の60%以上で感染性合併症が原因となる。
病初期の2週間以内に腸管内常在のグラム陰性菌(大腸菌やクレブシエラなど)と真菌(カンジダなど)が腸管壁の透過性が亢進することで,膵壊死組織に移行し(バクテリアルトランスロケーション),壊死組織で増殖することで感染が成立すると考えられている2)。そして典型的には2~3週目に膵臓感染(感染性膵壊死,膵膿瘍,膵周囲感染)を発症する3)。
膵臓への細菌感染および真菌感染は,抗菌薬を投与されていない患者ではそれぞれ40~70%,5~8%でみられ2~4),膵壊死範囲が大きいほど感染合併率が上昇する。膵組織の半分以上が壊死した場合,40~70%でその後感染性合併症を起こす。
感染症を合併すると死亡率が高くなるため,日常臨床において多くの専門家および多くの施設で重症膵炎に抗菌薬が予防的に投与されている。しかし,予防的抗菌薬投与により耐性菌やカンジダといった真菌による重複感染のリスクが上昇することが示されており,このようなリスクを天秤にかけて予防的投与を考慮しなければいけない。
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