特集 栄養療法
【コラム】エネルギー源としての脂肪乳剤投与―最近の知見と本邦の現状
小山 諭
1
Yu KOYAMA
1
1新潟大学大学院 医歯学総合研究科 消化器・一般外科学分野
pp.502-511
発行日 2011年7月1日
Published Date 2011/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100071
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健常人では,必要カロリーの約20~30%を脂肪から得ている。各種病態下においても,健常時と同様に脂肪からエネルギーを得ることが不自然ではないことは理解されよう。「脂肪」と一括りにいっても,脂肪はその構造や代謝産物の特徴からいくつかの系列に分類され,侵襲反応に有利に働く系列も,不利に働く系列も存在する。では,高度侵襲下にあるICU患者において脂肪は有害か,供給するべきものではないか,という問題,疑問がわき上がってくる。それに対しては,脂肪をICU患者に供給することは基本的には問題ない,と答えてよいだろう。なぜなら,高度侵襲下ICU患者にも経腸栄養が積極的に行われているが,その際に,あえて脂肪を含まない経腸栄養剤を投与することはほとんどないからである。さらには,侵襲反応に対する影響を加味した特殊な脂質を含む経腸栄養剤を投与することも行われている。
しかし今回のテーマは,“高度侵襲下ICU患者で(経腸栄養が行えない場合に)静脈栄養を行う際に脂肪乳剤を投与することの意義”である。本邦では,脂肪乳剤に関して,欧米で使用されている製品が使用できず,大豆油由来の脂肪乳剤soybean-oil based lipid emulsion(SO-LE)しか使われていない現状がある。海外で用いられている脂肪乳剤と本邦の現状を比較しながら,我々は脂肪乳剤(LE)をどのように用いればよいのか,以下に解説を加える。
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